ウクライナ通信

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Keep Calm(Зберігай(те) Спокій)

23.02.2022

「母語の日」の「開戦」

2月22日はプーチン大統領がドネツィク・ルハンシク両州を国家として承認したニュースで持ちきりだった。

ウクライナ人は祝い事が好きで、毎日のように何らかのお祝い事をしているのだが、22日は母語の日、ツアーガイドの日で、SNSでは「母語の日おめでとう!」「ガイドの日おめでとう!」の言葉や画像が溢れていた。

そこに冷水をかけるような、或いは逆に、熱湯を浴びせるようなニュースだった。

プーチンがオリンピック後に動くだろうということは誰しも予想していたことだが、「母語の日」という愛国心を鼓舞する日に敢えてするところがプーチン大統領らしいといえるだろうか。

ロシア語系のTelegramチャンネルでは「開戦」を囃し立てるニュースが飛び交う一方で、ウクライナ語系のSNSではプーチンのスピーチを揶揄するような在ウクライナアメリカ大使館のTweetが拡散した。

在ウクライナアメリカ大使館のTwitter

非常事態宣言

大騒ぎの22日から一夜。

23日になって、国家安全保障国防会議が最高会議でドネツィク・ルハンシク以外のウクライナ全土に非常事態宣言を発令することを提案、リヴィウでも、市長のサドヴィーが非常事態が導入されることとその概要を伝えた。

この種のお知らせは全てSNSで届く。

TVでも流れているが、私が最初に見たのはTelegramだった。

ちなみに、ウクライナでよく使われている情報系のSNSはTelegramとViber。

Viberの方が登録者は多いが、年齢層が少し高い。

FacebookとInstagramも同様の傾向で、学生たちはTelegramとInstagram、それにTik Tok。

一方、親世代はFacebookとViber、Youtubeを使っている人が多い。

社長からのメール

とはいえ、日常生活は変わらない。

23日の午前中、社内用のメールアドレスにCEOからお知らせが届いた。

「Hello team」で始まる社長のメールを要約すると、「仕事の環境と保障は会社がするので、備えることはちゃんと備えて、心配せずにしっかり働きなさい」ということだ。

西部や外国に移りたい人はそうすれば良い、軍に入りたい人はそうすれば良い、従軍している間に解職されることはないし、その期間の給与も保障する、とある。

多く語らず、社員の自由と自主性を尊重し、仕事の効率を保障してくれる、うちの社長らしいメールだった。

Keep Calm(Зберігай(те) Спокій)

さほど長くない社長のメールには、Keep Calmという言葉が二度出てくる。

We ask you to keep calm and believe in better, but be prepared for any development of the situation. 

(平静を保って、より良くなることを信じ、だけどどんな状況に発展しても良いように備えるんだよ)

そして最後は、こう結ばれている。

Keep calm and live a regular life. I think that’s the best option for now.

(平静を保って、普段どおりに生活していなさい。それが今できる最善の選択だと思うよ)

「Keep Calm and Carry On」はSNSなどでアレンジされてよく使われる常套句だが、元々は第二次大戦時のイギリスで開戦した際の心構えとして作られたものだ。

ウクライナ人も、この言葉をスピーチなどで好んで使う。

特に、ロシア国境での緊張が増してからは、政府も一般人もKeep Calm、Keep Calmと言い続けている。

英国政府がこのスローガンを作った際の「敵」はヒットラー。

Keep Calmを唱えながら、ヒットラーにそっくりなプーチンの顔を見ているのだ。

大使館からの連絡

日本大使館からも23日の午前中にご連絡をいただいた。

日本大使館リヴィウ事務所のKさんが、いつもどおりの穏やかな声で「ご存知のように非常事態宣言が発令される方向ですが、困ったことはありませんか?猫さんたちもお元気ですか?」と訊いてきてくださった。

「はい、大丈夫です。私も猫もいつもどおりです」と答えた。

こういう状況になって、普段より深く、長く、自分の人生について考えてみたのだが、どんなに考えても「この国に来て良かったなぁ」という言葉しか浮かんでこない。

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