真っ先にインタビューを提供してくれたのは、フランコ大学の東洋学科で日本語を専攻しているアリーナ。
すらりとした長身にあどけない顔立ちがキュートな21歳。
アリーナは私の日本語の生徒でもあります。
初めて会ったのは3年前、市の中心地にあるIT系の会社が主催する日本語の初級クラスの教室でした。
そのクラスは半年で終わりましたが、アリーナは毎週日曜日にうちに通って、会話を中心に勉強しています。
知り合った3年前は別のカトリック系大学に通っていたのが、フランコ大学の日本語専攻に転学、本格的に日本語に取り組んでいます。
アリーナの家族
アリーナはいま大学3年生。
妹のアンジェリカは日本でいう高校の最終学年で、ЗНО(高等教育機関入学のための外部評価テスト)の準備中。
お父さんは建設関係、お母さんはマニキュアサロンを経営しています。
時々写真を見せてもらいますが、お父さんもお母さんもスラリとした長身の美男美女です。
アリーナもアンジェリカもスラリとしているわけです。
家族は他に、おばあちゃんと猫のミサちゃん。
アリーナ一家は10数年前にルハンシクからリヴィウに引っ越してきました。
アリーナの言語環境
今回のロシアによる侵略のきっかけにもなったルハンシク出身だけに、アリーナの家族の母語はロシア語です。
特に、お父さんがウクライナ語があまり出来ないので、家ではロシア語で話すそうですが、これはよくあることです。
外国に行っても、国内で引っ越しても、女性と子どもたちは土地の言葉を覚えるのが早いもの。
男性はそうはいかないので、女性があわせるようになります。
家ではロシア語で話す一方で、大学や友達とはウクライナ語。
どちらもネイティブですので、淀みなく、きれいな発音で話します。
アリーナの苦手なウクライナ語
ごく自然にウクライナ語とロシア語を使い分けているアリーナですが、ウクライナ語のなかに苦手な語彙があります。
月の名前です。
私との日本語レッスンはウクライナ語なので、日本語のニュースを聞きながら逐語訳するとき、いつも月の名前でスピードが落ちます。
ウクライナ語の月の名前が覚えにくいからです。
ポーランド語やベラルーシ語、スロヴェニア語、クロアチア語など、他のスラブ諸語とそれぞれ部分的に重なるところがあるものの、どれとも全く同じというわけではありません。
その点、ロシア語の月の名前は英語と同じなので、忘れようがないのです。
そのためアリーナは「6月の新たな罹患者は678人です」という文章をウクライナ語にしようとすると、「6番目の月、6番目の月、えっとえっと・・・」としばし詰まりがちです。
日本語の6は分かっても、ウクライナ語の6月がすぐには出ないんですね。
インタビューの後
日本がウクライナからの避難民の受け入れを始めたとき、当然、アリーナにも声をかけました。
「日本に行けるっていうのは良いニュースだけど・・・いま家族や国から離れられるかどうか・・・ボランティアもしたいし」
答えにくいようだったので、「考えておいてね」とだけ言いました。
この原稿を書いている3月20日現在、アリーナはまだリヴィウにいます。
警報が頻繁になったのでレッスンはお休みしていますが、時々日本語の練習問題を出したり、私の仕事のリサーチを手伝ってもらったりしています。
一刻も早く、平和な日々が戻ってきますように。
(画像は本人に提供してもらったものです。無断転載はご遠慮ください)
アリーナのパパや妹、友人たちのインタビューはこちらからご覧いただけます。