ウクライナ通信

ウクライナからの現地情報とウクライナ人の生の声をお伝えします

ハルキウから来た避難民

06.03.2022

ウクライナ人と日本人は似ている

ウクライナ人と話していると、一昔前の日本人に似ているなぁと思うことがある。

ウクライナの社会は、アメリカや西欧、北欧に見られるような個人主義とは全然違う。

会社はどこもチームワークや交流を大切にするし、ご近所には目配りの効くオバサンがいて、コミュニティ全体に目を光らせている。

特にリヴィウはそうだ。

そのせいか、住んでいると、昭和の日本みたいな懐かしさを感じる。

住民チャット

私の住む建物にはViberに住民チャットがある。

他のところでも書いたが、ウクライナ人がよく使うコミュニケーションアプリはViberとTelegramで、Viberの方が若干、利用者の年齢層が高い。

そのせいか、雰囲気も違う。

私はViberは使っていなかったので住民チャットにも入っていなかったのだが、シェルターに入る必要が出てきたため管理人のラリサさんに入り方を訊いたら、Viberのチャットに入るように言われた。

「チャットで全部指示するから」と。

そう言われれば入るしかないので、入った。

そのチャットは「○○○○団地○○棟 Friendly neighbors」というような名前が付けられている。

名前からして、昭和の団地の奥様を思わせる。

気配り婦人たち

このチャットの報告が実に細かい。

まず、お掃除をしてくれているクリーンスタッフの人から一日に何度か「○○棟の○○階、ピカピカです」みたいな短信が入る。

人の出入りの報告もする。

新入居者は勿論、「今日、うちに誰々を泊めます。いついつ出発します」というようなことも報告する。

特に今は大変な時期なので、「明日、キエフから人が泊まりに来ます。母親と18歳の女の子と12歳の少女。明後日ポーランドに出発します。朝、早いので、ちょっとドタドタするかもしれません」というようなメッセージがよく入る。

それらのメッセージを全て読んで統括しているのが、管理人のラリサさんだ。

「チェルニヒウで被災した知り合いがこっちに来て避難所に泊まっているんだけど、着るものがないらしい」というようなメッセージが入ると、どこどこのセンターで被災者用の衣料が提供されていると即座に回答する。

泊まるところがない知り合いがいるという質問が入ると、即座に避難所のリストが送られてくる。

うちの会社にもこういうタイプのしっかりした女性支社長がいるのだが、私が子供の頃の日本にもこういうタイプのオバサンたちがいた。

ちょっと怖いけど、頼りがいのあるタイプ。

一日中風呂に入っている男

その住民チャットに、10時過ぎ、「○○棟の7階、さっき帰ってきてから一時間くらいずっとどっかからシャワーの音がしてるんだけど、大丈夫?」という男性住民のメッセージが入った。

男性はガス漏れを心配しているようだった。

すぐに別の住民から「それは今日○○号室に入ったハルキウからの新しい住民だよ」という回答が入った。

最初の男性が「それなら良いけど、あまりにも長い間シャワーの音がしてるから空耳かと思って」と返すと、「一日中でも入ってるよ。何しろハルキウの空爆中は8日間というもの、一度も風呂に入れなかったんだから」という返事だった。

この返事には誰も言葉を返せなかった。

 

同じくハルキウの爆撃で家を失ったうちのチームリードのトニーからは、金曜日、親戚のいるルーツィクに着いたと短信があった。

ルーツィクはリヴィウに隣接するヴォルィニ州の州都で、普通のときなら、リヴィウから車で3時間ほどで着ける。

ハルキウからだと普段でさえ、車でも電車でも10時間以上かかる。

しかも、その前の一週間、冷たい地下シェルターにこもっていたのだ。

自分たちの家が破壊されるのをスマホの画像と爆音で確認しながら。

トニーは明日からミーティングに出ると言っていたが、どんな言葉をかけたら良いんだろう。

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