15.02.2022
IT業界の共通言語は英語
私が籍を置いている会社は、キエフに2つとリヴィウに1つオフィスを持っている。
どのオフィスも各国語のプロジェクトを持っているので、社内の共通言語は英語となっている。
前の会社もそうだったが、ウクライナのIT業界では、連絡、報告等の共通言語は英語である。
英語が出来なくてはプロジェクトには入れないので、どの会社でも社員に英語レッスンを提供している。
逆にいうと、英語が出来て、専門技術と知識、経験があれば、現地語が出来なくても雇用してもらえる。
実際、英語しか話さない外国人技術者もたまにみかけるが、少なくとも、社内においては、現地の言語が出来ないからといって否定的な扱いを受けることはない。
社内の共通言語は地域によって違う
プロジェクトでの言語は英語だが、社員の大半はウクライナ人なので、キエフのオフィスでは社員たちはロシア語で話している。
ただし、ウクライナ語も、勿論、通じる。
出張で何度か行ったが、ウクライナ語で話しかければ、みんなウクライナ語で答えてくれた。
一方、私が通うのはリヴィウのオフィスなので、社内の共通語はウクライナ語である。
お掃除をしてくれる優しいおばさんたちとも、陽気な警備員さんたちとも、ウクライナ語で話す。
しかし、うちでも勿論、キエフから出張で人が来れば、ロシア語で案内する。
たいていのウクライナ人はウクライナ語もロシア語も理解できるので、ウクライナ語で訊かれればウクライナ語で答えるし、ロシア語で訊かれればロシア語で答えるのである。
プロジェクトミーティングではロシア語
昨日も書いたように、私の入っているプロジェクトはキエフオフィスが3人、東部のハルキウが2人、その他のウクライナの地方からが3人で、ロシアのペテルブルクから1人参加している。
彼らの日常言語はロシア語で、ウクライナ語話者は私だけなので、ミーティングでは全員がロシア語で話す。
チームリードとのミーティングではウクライナ語
プロジェクト全体のミーティングの他、チームリードのトニーと週イチで一対一のミーティングがある。
このミーティングのときは、私は勿論、トニーもウクライナ語で話す。
私もロシア語は一応話せる。
大学でも習ったし、当時はロシア語が得意で、スピーチコンテストで入賞したこともある。
会社に入ってからも社内レッスンを受けたので、余程の早口やスラングの羅列でない限り、聞き取りも出来るようになった。
しかし、トニーは私のウクライナ語愛を知っているので、頑張って慣れないウクライナ語で話してくれる。
ロシア語話者のウクライナ語
正直言うと、トニーのウクライナ語は上手くない。
というか、下手だ。
東部のウクライナ人でも、20代以下の若い人の場合、学校で習っているので、自由ではなくても、一応は話せる。
しかし、トニーの世代はこれまでの生涯で一度もウクライナ語を使ってこなかったのだから、下手なのは仕方ない。
国語とはいえ、一度も使ったことのない音は発音できないのである。
トニーの場合も、文法的には間違っていないのだが、出したことのない音はどうしても出ないようだ。
例えば、「すごく良いアイデアだね」と言いたい時トニーは、「Це дуже гарна ідея」と言うのだが、「гарна」の「г」の発音がトニーには出来ないため、本来「Harna」と聞こえるべき言葉が「Garna」と聞こえる。
このгが、ウクライナ語とロシア語の一番大きな違いの一つだが、他にも、ウクライナ語でウクライナと綴る時の「Україна」の「ї」がロシア語の人には出せない。
それでもトニーは私と話すときは、ウクライナ語で話す。
トニーだけではない。
トニーの世代のロシア語話者のウクライナ人は皆、私と話すときだけウクライナ語で話すのである。
「ロシア語で良いのよ、分かるから」と言っても、「いや、良いよ」とウクライナ語で話し続ける。
「ウクライナ語だと大変でしょ」と言っても、「ウクライナ語を聞くのが好きなんだよ」と言って、話し続けている。
今日もロシア系のビデオブロガーが、ハリコフ(ハルキウのロシア語読み)はロシア語話者だからウクライナに対する愛国心はないと話していたが、ネイティブランゲージと愛国心は別だ。
「ツェ・ドゥージェ・ガルナ・イデヤ、トモコ Це дуже гарна ідея, Томоко」
トニーの拙いウクライナ語にはウクライナに対する愛が溢れている。