10.03.2022
4日ぶりの外出
今のリヴィウは混沌としている。
大家さんが来たので、一緒に銀行に行ってきた。
日曜日にペットショップにでかけたときは普段の日曜日との比較で閑散とした雰囲気を感じたが、今日は意外に活気があった。
国境への列はまだ長いらしく、車も混雑していたが、渋滞はいつものこと。
リヴィウ駅では国立陸軍アカデミーのオーケストラがミニコンサートを開き、国旗をはためかせながら国歌を演奏していた。
スーパーやコンビニの食料品は品不足が続いているが、まったくないわけではない。
お店の品不足を補うように、市場や教会の近くの通りには物売りも出ている。
一月、二月は新型コロナのオミクロン株が猛威を奮っていたので姿を消していたのが、いつの間にか復帰しているのだ。
「戦争」などないかのように、屋台で小物を売っているお婆ちゃんもいる。
意外に、いつもどおりのリヴィウの町だった。
大家のヴォロージャ
うちの大家さんはヴォロージャといって、国境の近くに住んでいる。
友達の友達のお父さんで、大柄で朴訥で笑顔の優しい、スラブ人らしい男性。
家賃は普段、ドルで払っている。
ただ、いまこういう状態なので、今月はフリヴニャで払わせてほしいと前もってお願いしてあった。
問題はレート。
現在のドルの公式レートは30フリヴニャ程度で下げ止まっているが、実際にはもっと高い。
日曜日に見た街中の両替所で35フリヴニャだったから、今はもっと上がっているはず。
ヴォロージャの住む国境近くはもっと高いに違いない。
それで、私の方から35フリヴニャのレートで支払いたいと申し出た。
ヴォロージャは「良いよ、良いよ、いつもどおりで良いよ、値上げなんて考えてないよ」と言い、ATMで引き出した、いつもよりちょっとだけ高いお家賃を持って、国境近くの家に帰っていった。
今日のリヴィウ 物価
「リヴィウ的戦時生活」の項で書いたように、「戦争」が始まった当初は物価が高騰した。
特に、賃貸料が5倍から10倍にまではね上がった。
しかし、その後、市への報告や陳情が相次ぎ、市長が家主やホテル業者に対し、部屋の賃貸料は戦争の前のレベルに据え置くよう、警告を発した。
そのとき、非常識な賃貸料を見かけたら報告するようにという通達がでたこともあって、以後、家賃の高騰は、少なくとも表向きは収まっている。
また、家賃が高騰していた一週間前とは状況が異なってきた。
戦況が長引き、西部にも危険が迫ってきたため、高額な住居の需要も落ちたのだ。
安全を求める人はもっと西まで行く。
いま、ここに留まる人は高いお金など出せない避難民が主だ。
外国に家族を逃がすには、仕送りもしなければならない。
高い部屋は売れなくなっている。
銀行
私のメイン銀行であるクレドバンクでは列もなく、すんなり引き出せた。
クレドバンクはポーランドの最大手PKOバンク系列の銀行で、リヴィウには支店も多いし、ATMも多い。
ウクライナの最大手はプリヴァトバンクだが、こちらはどの店舗も長い列が出来ていた。
プリヴァト銀行は国営銀行で、本社はドニプロにある。
ウクライナ人の家庭ならどこにも一枚はプリヴァト銀行のカードがあるというくらいシェアが大きい。
しかし、「侵略」が囁かれていた先月16日に、同じく最大手のオシチャード銀行とともにサイバー攻撃を受けてサイトがダウン。
いつどこで使えなくなるかわからないので、国外に出る人は出せるだけ出して行く。
食料品事情
大家さんを送り出した後、スーパーのATBに行ってきた。
前回買い物したのは日曜日。
その時に比べると、若干増えているような気がする。
飲料水は豊富にある。
トイレットペーパーもある。
パンもあるし、牛乳もある。
前回は全く棚に残っていなかったコーヒーがあったので、買うことにする。
それから、パンとシリアルバー、牛乳、ハム。
全部で、日本円にして1000円くらい。
特に高いわけでも、安いわけでもない。
東の人たち
スーパーの店内では、明らかに地元の人とは違うタイプの人達が買い物をしていた。
どう違うかというと、まず、着ているものが違う。
熊の毛皮の帽子を被ったお爺さんと細い体にロングコートをまとったお婆さんの二人連れ。
ソ連時代の映画でみたような老夫妻の口から出る言葉はロシア語。
Viberの住民チャットにも、ハルキウからの新住民が次々紹介されている。
ロシア語で自己紹介する人もいるが、慣れないウクライナ語でたどたどしく挨拶する人もいる。
受け入れる方も、参入する方も、少し戸惑っている。
移民支援
こうした東部からの避難民に対する支援も進んでいる。
「リヴィウ・ポータル」によると、夜間外出禁止令の出ている間、駅と避難民受け入れセンターの間を無料バスが走っているらしい。
リヴィウにはいま、夜22時から朝7時まで外出禁止令が出ているので、夜の移動が難しい。
しかし、東からの避難民は時間を選べないので、夜に到着することもある。
バスを使えば無料でセンターまで行ける。
ポーランド等、隣国に移動するための短期間の避難所は公的なものに加え、私的に提供している人も増えている。
「リヴィウ・ポータル」の別の記事によると、侵略者に対するウクライナの「勝利перемога」を信じる人の割合は、最新の調査で92%に達したそうだ。
ウクライナ人はタフだ。
【Під час комендантської години у Львові курсують автобуси для переселенців】
【Віра в перемогу росте: вже 92% українців переконані у відбитті нападу Росії】