26.02.2022
「開戦」から3日
アインシュタインが相対性理論について、「熱いストーブの上に手を置かされたら1分がとても長く感じるが、美女と一緒にいると1時間でも一瞬のうちに過ぎる」というような説明をしたという逸話があるが、あれはよく言ったものだなぁと実感している。
戦争が始まった。
ついに始まってしまったという感じ。
22日(火曜日)のプーチンロシア大統領によるドネツィク・ルハンシク両州の国家認定から「開戦」、23日から非常事態に入ったが、それからまだ3日しかたっていない。
普段、仕事をしているとあっという間に時間がたってしまい、あっという間に一週間、あっという間に歳を重ねている自分に驚いたりする。
それが、非常事態になると、時間がなかなか流れてくれない。
つい三日前には頭の上を戦闘機が徘徊していなかったし、友達や同僚の家が爆撃をくらったりしていなかった。
早く元の生活に戻りたいと思うのだが、苛立つくらいゆっくりときが流れている。
空襲警報が鳴っている間は、時計の数字がなかなか動いてくれない。
空襲警報が解除されないとシェルターを出てはいけないのだが、じっとしている時間がつらい。
リヴィウЛьвів
空襲がひどいのはキエフと東部だが、私の住むリヴィウやその周辺でも、一昨日からひっきりなしに空襲警報が鳴っている。
非常事態宣言が出て以来、サドヴィー市長のTelegramから空襲警報の発令と解除が報じられるようになった。
ただ、この警報サイレンが弱々しい。
市長のFacebookのページには、「○○○通りに住んでるんだけど、サイレンが全然聞こえない!」「○○では、窓を開けてやっと聞こえる」「もっとパトロールカーで警告してほしい」といった市民からの注文が相次いでいる。
防空壕(シェルター)の評判も悪い。
数だけはたくさんあるのだが、キエフの実用的なシェルターと違って、前の戦争で使われた防空壕をリストにあげただけらしく、「(市が公開した)リストにあるシェルターに行ったのに、開かない!」「使える状態にない」といった、こちらも苦情が並んでいる。
リヴィウはキエフ程「開戦」に備えていなかったことが露見した形だが、ロシアが攻めて来ないと高をくくっているわけではなく、全面戦争になればロシアがウクライナ文化の心臓であるリヴィウを攻撃してくることは十分想像できる。
ただ、今のところプーチン大統領とロシア政権は名目上、「ロシア系住民保護のための特別軍事措置」と称して軍を送り込んでいるので、すぐには来ないだろうという思いはあった。
昨日も今日も早朝からサイレンが鳴って、今日はその後、2,3時間おきに5,6度も鳴った。
ただ、警報が鳴るだけで、爆撃はない。
市長のTelegramから赤いお知らせが届いたら、シェルターに避難。
20-30分くらいして、緑のお知らせが届いたら空襲警報解除、外に出て良い。
空襲警報が鳴るというのも神経に障るものだが、ゆっくり眠れないため、鳴っても行きたくなくなってくるのが、自分でも怖い。
警報は早朝と夜が多いので、昼間のうちに少し寝ておこうと思うと、寝付いた途端にサイレンが鳴る。
囁かな音でもサイレンはサイレン。
偵察を続けて神経を痛めつけ、慣れて動きがにぶくなってしまった頃に爆撃が来るのではないか。
そういう思いにかられてくる。
友達や生徒さんと話すと彼らも似たような心境らしい。
「ちゃんとシェルターに行くんだよ」と自分に言い聞かせるように言いあっている。
私が今これを書いているのは東ヨーロッパ時間の26日の夜。
さっき、23時を過ぎた。
灯火管制がはいっているので、23時を過ぎたら電気を消さなくてはいけない。
昨日の時点では11時を過ぎても灯りが灯っている部屋が目についたが、今日は真っ暗だ。
市のパトロールが始まったので、灯りが煌々と灯っていると注意を受けるのかも知れない。
非常事態、夜間外出禁止令、灯火管制、防空壕、段々と確実に戦争が身に迫ってきた。