ウクライナ通信

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リヴィウ的戦時生活

03.03.2022

軍事政権成立

リヴィウでも戦時生活が始まった。

昨日通達が出て、軍の統一管理による軍事政権が成立したのだ。

サドヴィー市長によるこの通達の発表には、戦争開始時から問題になっていた「東からの避難民」の徴兵義務が含まれている。

戦地であれ、非戦闘地であれ、余所からリヴィウ州に来た18歳から60歳のウクライナ人男性は、到着後24時間以内に管轄のセンターに行って軍事登録しなければいけなくなったのだ。

これが「避難民」の持ち込んだ非常事態にうんざりしていた市民から支持され、私が見た時点で、2万近いイイねと1,000近いコメントと6,000を超えるシェアが付いていた。

経済畑出身であたりのソフトなサドヴィー市長の支持者は自営業者など、しっかり者の女性が多いのだが、こうした女性の間で「うろうろしている避難民」が不評だったのだ。

自分たちはコロナで自粛、やっとマシになってきたかと思ったら戦争で家にこもり続けているのに、知らない男たちが通りで騒いでいる、レストランもサウナもスパもそうした「避難民」が押し寄せてくるというような状況だったらしい。

【参照元 サドヴィー市長のFacebook】

Наказ Львівської обласної військової адміністрації

Триває формування 125-ї бригади Територіальної

賃貸料の是正要求

なかでも一番問題になっていたのが、こうした東からの「避難民」目当てにつり上がっていた賃貸料だ。

市長はこれにも釘をさした。

今日、午前中の通達で、賃貸料は「戦争」の前と同程度であるべきで、「戦争」を利用して異常に高額な賃料を設定する家主やホテルの経営者は「略奪者МАРОДЕР」と同じだと断じた。

異常な価格設定をしている経営者や家主がいたらすぐにホットラインに連絡することを市民に要求し、「略奪者」についてはその名前を公開して保安庁に渡すと強い調子で言い渡した。

こちらもあっという間にイイねが2万を超え、コメントが700、シェアが5000を超えた。

【参照元 サドヴィー市長のFacebook】

Повідомляйте про мародерів, які завищують ціни…

略奪者たちМародери

市長が使った「略奪者Мародер」という言葉はいま、TelegramなどのSNSを大いに賑わせている。

Мародерというのは、戦争で破壊された家や店をどさくさに紛れて破壊し、金目のものを盗んでいく破壊者たちのことをいう。

日本でいう火事場泥棒みたいなもので、当然、人の不幸につけ込む最悪の犯罪とみなされる。

そのため、自警団などに発見されると、捕獲されて私的制裁を受けることもある。

その私的制裁のやり方はだいたい決まっていて、服を脱がせて下半身をむき出しにし、道路脇のポールなどにテープでぐるぐる巻きにして縛り付けるのだ。

そしてそれを撮影して拡散する。

圧倒的に若い男、あるいはグループが多いが、たまに女の子のМародеркаもいて、お尻を丸出しにされて縛り付けられている。

正直言って、見ていて気持ちの良いものではないが、検索すると幾らでも画像がでてくる。

略奪並にひどい賃貸料

市長は、異常高値の貸し部屋を、こうした「戦争につけ込む犯罪」と同様の「略奪」だと断罪したのである。

実は、昨日のTelegramのニュースですでにこうした異常価格の話題は出ていて、「リヴィウが避難民をどんな風に迎え入れているかっていうと、なんとアパートの賃貸料が5倍から10倍にもなってる。当局からみたら、こういうのは「略奪мародерство」と一緒じゃないか?」とコメントがついていた。

Telegramのニュースなので2,3時間後に見たときにはもう消えていたが、その短い時間に1000近いナイスが付いていた。

リヴィウのチャンネルだったので、市長あるいは周辺の誰かが見ていたのかもしれない。

このニュースはTelegramからはすぐに消えたが、その時提示されていた画像がこちらで、実際に賃貸サイトにあった。

画像の通貨マークはフリヴニャで、期間は26日、つまり、だいたい一ヶ月。

浴室一つ、寝室一つ、ベッドが一つか二つで、15万フリヴニャから19万フリヴニャの値がつき、どれも元はもっと高いとうたっている。

ベッドが二つある部屋はどちらも元値が20万を超えているが、20万フリヴニャは今のレートだと日本円でだいたい76万くらいになる。

フリヴニャの対ドルは1ドル0.033で下げ止まっているので、米ドルだと6,600ドルくらい。

ウクライナ人の平均給与が20,000フリヴニャ、日本円で76,000円くらいなので、平均給与の10倍ということになる。

26泊なので、一泊にすると7,700フリヴニャで、日本円にすると30,000円近い。

給与が7~8万の土地で、給与レベルの高い東から逃げてきた「避難民」の一部が一泊3万円の部屋を借り切って騒いでいる。

彼らを当て込んで様々なものが値上がりしていく。

目先がきくサドヴィー市長だけに、こうした市民の苛立ちを素早く察したのだろう。

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