ウクライナ通信

ウクライナからの現地情報とウクライナ人の生の声をお伝えします

46日目 空襲警報のない週末

10.04.2022

穏やかな週末

この週末、リヴィウでは久しぶりに一度も空襲警報が鳴りませんでした。

最後にアラームが入ったのは、金曜日の午前8時半頃。

そのときも、30分くらいで解除になりました。

クラマトルスィクの砲撃

ただし、リヴィウでは静かだったものの、ウクライナの他の地域では依然として、度々空襲警報が出ています。

私はTelegramでキエフやハルキウのチャンネルも登録していますので、そちらの方では頻繁にアラームが入ります。

日本でも報じられているように、首都周辺を退いたロシア軍は軍備を再編して東部に集中。

8日にはドネツィク州のクラマトルスィク駅が砲撃を受け、大きな被害が出ています。

最新のニュースでは、死亡者が57人、負傷者が109人と報じられていました。

クラマトルスィクが標的になっているという情報は既に広まっていたので、駅には避難を求める住民が数千人(一説では4000人)集まっていたとのこと。

実際、リヴィウにはひと足早く、もしくは少し後の電車を利用して到着し、何を逃れたクラマトルスィク市民もいます。

死亡者のうち、少なくとも5人は子供だということでした。

リヴィウの市民生活

キエフからの避難民が開いた新しい店

サイレンも鳴らず、お天気も良かったので、土曜、日曜と町を歩いてきました。

中心地は人がいっぱいで、それを見込んだ露店もたくさん出ていました。

古書の市で有名なピドヴァリナ通りには、いつも通り古い雑誌や本、切手、コイン、バッジ等の露店が所狭しと並んでいましたし、

前に勤めていた会社のオフィスのあるロクソラーナというショッピングセンターの前には花売りのオバサンたちが店を広げていました。

手を繋いだ若いカップルが小さなブーケを買って楽しそうに歩いていくほのぼのとした情景は、戦争の前とまったく変わらないリヴィウの日常です。

画像はSNSで話題になっている、キエフからの避難民がリヴィウの中心地に開いたパイのお店です。

ВИМУШЕНІ ПЕРЕСЕЛЕНЦІ З-ПІД КИЄВА ВІДКРИЛИ У ЛЬВОВІ ВІКОНЕЧКО «КІТ» З ПИРОГАМИ. ФОТО

この頃リヴィウで増えたもの

ただ、違いもあります。

中心地まで足を伸ばして気づいたのは、

  • 人が多い
  • ロシア語話者が多い
  • 他都市のナンバーの車が多い

の三点です。

人が多い

まず、人が多いということ。

前回中心地やモールを歩いたのは2週間くらい前でしたが、その頃は薬局以外のお店はどこも品薄、ショッピングモールなどは閑散としていました。

今回は、お店はほとんど通常通りの運営で、従業員を確保できない店舗が若干短縮営業になっている程度。

ショッピングモールは人でいっぱいで、家族連れ

ロシア語話者が多い

普段と違うのは、こうした買い物客の多くがロシア語話者だということ。

これはもう誰の眼にも歴然としていて、表立って言うことはありません。

不満を覚えている人は勿論いて、チャットでは「リヴィウじゃないみたい・・・」という囁きをあちこちで見かけます。

ただ、キエフからの避難民に関しては、一時的な避難民であるという認識がリヴィウ市民の中にもあります。

リヴィウ人がリヴィウを愛しているように、キエフ人はキエフを愛しているので、他都市に定住することはないという認識です。

実際、週の始めに市長のクリチコが慎重に時期を見るようにと言ったにもかかわらず、キエフに戻る人は増え続けました。

キエフナンバーが多い

東からの移民の存在感が大きいのは、車のナンバープレートを見ても一目瞭然。

ウクライナでは地域によってナンバープレートの最初にあるコードが違います。

リヴィウのコードはВСなので、以前なら街行く車のナンバーはВСが圧倒していたんですが、今回はАА、АІのコードが目に付きました。

ААは都市キエフのコードで、АІはキエフ州のコードです。

戦火のなかを遠出してきた後なので洗車したばかりなのか、ピカピカの車が走ってるなと思うとキエフナンバーでした。

ウクライナのサロン

ウクライナのサロンについて少し。

前回、サロンについて書いた後、お世話になっているライターさんとTelegramで「戦争が嘘みたい。そういう生活もあるんですよね」というお話をしました。

実はよくそういうことを言われるんです。

また、戦争のときにサロンの話なんかしなくても・・・と言われることもあります。

でも、いま戦争があるからこそ、普段の生活のことを話しておきたいんです。

以前、日本にはウクライナに関する情報は全くといって良いほどありませんでした。

今は、ウクライナというと、悲惨な戦争とその被害者、避難民の情報ばかりです。

明日私達が死んでしまうと、ウクライナに関する日本の人の記憶は、哀れで悲しい記憶ばかりなのかなと思うと残念でならないんです。

高い美容技術

ウクライナの生活には、日本にあるものは殆どあります。

美容サロンやマッサージはもちろん、エステもスパも脱毛サロンもマニキュアサロンもあります。

そして、それらの技術は西欧と比べても全く引けをとりません。

元々、ウクライナ人は技術系が得意で、業種でいうと医療とITが特に優秀、実務にも優れています。

また、体格が良く、体力もあります。

美容系、医療系のサービス業では、料金が安く、技術が高いため、国境の近いリヴィウには、ドイツ、ポーランド、トルコといった近隣国からお休みを利用して施術に来る人もいるほどです。

リヴィウは東部より物価が安いので、キエフからもお客さんが来ます。

私の日本語の生徒のアリーナのお母さんはマヌキュアサロンを経営していますが、最近はキエフから避難してきた女性の顧客が増えていると話していました。

久しぶりのマッサージサロン

土曜の午後は、私自身、久しぶりにマッサージサロンに行ってきました。

私が去年通っていたのは、Zarpaというサロンでした。

ここではリンパドレナージュを中心に1時間やってもらっていました。

料金は、前回書いたように、一回400フリヴニャです。

今回行ってきたのは、Carpe diemというサロン。

こちらはInstagramで見つけたお店です。

今回は初めてでしたので、90分のヒーリングコースをお願いしました。

90分で700フリヴニャ。

日本円で3000円くらいです。

施術してくれたのは、ブラディスラウというがっしりした男性マッサージスト。

前のサロンでは女性のマッサージストさんだったので、ちょっと緊張。

しかし、マッサージが始まると、そんな緊張も吹っ飛びました。

前のサロンでは、「やっぱりウクライナの女の子は力が強いなぁ・・・」と感嘆したものでした。

しかし、男性の力はまた別なんですね。

「やっぱりウクライナの男の人の力はすげぇ・・・」と思いながら、「い、い、痛いです!」「痛いとこは不健康なんですよ」という応答を繰り返しました。

痛いけど、癖になる気持ち良さでした。

Carpe diem

ちなみに、Carpe diemというのは、ホラティウスの詩に出てくる有名なラテン語の成句で、映画「いまを生きる」のモチーフにもなっている言葉です。

この言葉はウクライナ人の生き方に通じるものがあるように思います。

明日はどうなるか誰にも分からない、明日が来るのかどうかも分からない、今を楽しみ、今を生きる、今日咲いている花をいま愛でないでどうするのだ・・・。

以前、座談会で「日本人は過去を省みるのをやめられない」というようなテーマで話をしたことがあります。

その時、「ウクライナ人ならやめられる、ウクライナ人に必要なのは今日だ」と誰かが言ったかと思うと、すかさず別の誰かが「いや、今日じゃない、いまだ。ウクライナ人に必要なのはいまを生きることだ」と言いました。

リヴィウにはCarpe diemというブランドの登録が二つあって、一つはこのマッサージサロン、もう一つは語学学校です。

キエフにはもっとたくさんあって、私が知っているだけでもCarpe diemという名のカフェと美容院があります。

やはり、ウクライナ人には「いまを生きる」のが似合うようです。

Carpe diemのInstagram

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